口臭について
Q&A 口臭
「たかが口臭」といっても社会生活や対人関係に及ぼす影響は無視できません。だからといって気にしすぎるのも禁物です。
さわやかな息を保つために知っておきたい基礎知識や予防のヒントを紹介します。
Q「口がくさい」と言われてショック!
A口の中の状態に注意するきっかけになったと前向きに受け止めましょう
面と向かって「口がくさい」と言われたら、ショックを受けて当然でしょう。
実は、この「誰かに指摘される」ということが口臭の本質を表しています。
というのも、口臭とは単に口のにおいではなく、呼吸や会話の際に口から出て来る息が「第三者にとって不快に感じられるもの」と定義されているからです。
無人島に一人で暮らしているならともかく、社会生活を営んでいる以上、からだから嫌なにおいをさせないことはエチケットといえます。
口のにおいは誰にでもありますし、強さも常に変わっているので、気にしすぎないことが大切です。でも、「口がくさい」と言われたのなら、健康上の問題があるのかもしれません。口の中の状態に注意するよう教えてくれたのだと前向きにとらえ、正しい口腔(こうくう)ケアの習慣化を受診などの行動に移すきっかけにしましょう。
口臭は、英語では一般に「バッドブレス(Bad breath)」といいます。
非常に強い口臭は「ドラゴンブレス(Dragon breath)」と表現することもあります。
竜が火を噴いて周囲を威嚇する様子にたとえているわけで、もちろん、直接本人に言ってはいけない「陰口」です。
口臭は自分では気づきにくく、他人は指摘しにくい、やっかいなものです。多くは家族など近しい人から教えられますが、遠慮がないぶん、ずけずけと言われて傷つくことが少なくないようです。指摘するときは、自分が言われたときの気持ちを想像して言葉を選びたいものです。
Qなぜ口がくさくなるの?
A口の中のたんぱく成分を細菌が分解する過程で悪臭を放つガスが発生します
私たちのからだは日々、新陳代謝を繰り返しています。皮膚があかとなってはがれ落ちるように、口の中でも粘膜のもっとも外側にある上皮細胞がはがれている のです。このほか、口の中には細菌を攻撃する白血球の成分や食べかすなどもあるため、 たんぱく質が豊富です。
口臭は、これらのたんぱく質を口の中にすむ細菌が分解することで生まれます。
分解の過程で「揮発性(きはつせい)硫黄(いおう)化合物(VSC)」と総称される、不快なにおいを放つ硫黄ガスが発生するのです。VSCのうち硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの3種類が口臭の原因になります。
実は、はがれ落ちた粘膜上皮細胞はおもに舌の表面のざらざらしたすき間にたまります。
ここに血球成分や食べかす、死んだ細菌なども集まり、白い苔状(こけじょう)の堆積(たいせき)物になります。 いわば舌の汚れで、これを「舌(ぜっ)苔(たい)」といいます。
歯垢(しこう)も口臭の原因になりますが、最大のVSC製造工場は舌苔で、約6割がここで産生されます。ただし、うっすらと白く見える程度なら、気にする必要はないでしょう。
Q息がにおうと言われた。なにか病気が隠れているのでは?
A原因はさまざまですが治療が必要な口臭の9割以上は口の中に問題が
口のにおいは生理的に生じるもので、ある程度の口臭は誰にでもあります。
しかし、常に周囲に不快感を与えるほどにおうのなら、何らかの原因があると考えたほうがいいでしょう。検査をして実際に口臭が認められる「真性口臭症」は、次のように分類されます。
■生理的口臭
原因となる病気が見当たらないもので、口臭原因の揮発性硫黄化合物(VSC)は主に舌(ぜっ)苔(たい)で産生されています。日本の口臭病患者の約3分の1がこれにあたると考えられています。
■病的口臭
原因となる病気が明らかなもので、口腔(こうくう)疾患とそれ以外に分けられます。
■口腔(こうくう)由来
ほとんどは歯周病で、日本の口臭疾患患者の約3分の1を占めます。ほかに、唾液(だえき)分泌の減少、入れ歯の清掃不良、進行したむし歯などが挙げられます。
■全身由来
副鼻腔炎(ふくびくうえん)など鼻の病気、へんとう炎などのどの病気、気管支拡張症など呼吸器系
の病気、肝炎など消化器系の病気、糖尿病など全身性の病気などが関係していると
考えられています。
「2大原因は舌苔と歯周病で、治療が必要な人の9割以上は口の中に問題があります。
全身由来の病的口臭も大部分は口の中の問題を併せ持っています。」
これら真性口臭症のほかに、実際は口臭がないのに本人はあると思っている場合があります。
検査結果の受け止め方によって、「仮性口臭症」と「口臭恐怖症」に分けられます。
Q朝起きたときに口がくさいけど大丈夫?
A起きてすぐは誰でも一日でいちばん口臭が強いときです
朝起きたときに口の中がネバネバして不快に感じた経験は誰もがしているでしょう。
寝ている間は唾液(だえき)の分泌が減るため、細菌が増殖して口の中が汚れてしまうのが 原因です。口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)もたくさんつくられるので、起床直後は一日のうちでもっとも口臭が強いときです。しかし、食事や歯みがきをすると細菌が減り、刺激を受けるので唾液も分泌され、口臭は弱くなります。
このような生理的口臭は誰にでもありますが、その強さは口の中の細菌や汚れの程度、唾液量などによって異なります。
*生理的口臭は起床直後が最も強く、食事や歯みがきをすると弱まります。
その後も食事をするたびに弱くなります。
Q生理のときや妊娠中の口臭はしかたない?
A口の中の細菌の状態が変わりにおいやすくなります。ふだん以上に清潔に
生理中に口臭が強くなるのは、「唾液(だえき)の分泌減少→細菌の増殖→口臭物質の産生増加」で説明されています。しかし、国際口臭学会会長八重垣健歯科医師(日本歯科大学生命 歯学部教授)の研究によれば、月経周期の中で口臭が強くなるのは「排卵時と月経時」です。
しかも、月経時より排卵時のほうが口臭物質は多いのですが、「排卵時の口臭に気づいている人はほとんどいない」そうです。口臭が強くなる時期は「排卵時だけ」「月経時だけ」「排卵時と月経時の両方」の3パターンがあり、人によって違うので、排卵事前後も注意したほうがいいかもしれません。
一方、妊娠中の口臭は、口の中が汚れやすいからといわれています。妊娠がストレス になって唾液の分泌が減るうえに、つわりで歯がみがけないなどの事情が加わって 口臭が強くなってしまうのです。また、妊娠中のホルモンの状態は歯周病原菌を増やす方向に働くため、歯肉炎になりやすいのも理由の一つです。
いずれにしろ、生理的口臭が強くなっているので、口の中を清潔にすることが第一です。うがいや歯みがきの回数を増やしましょう。
Q子どもの口がくさい!
A歯の生え始めや生え替わりは受診不要ですが、それ以外なら耳鼻咽喉科へ
子どもは大人に比べて唾液(だえき)の分泌量が多く、舌(ぜっ)苔(たい)もつきにくいので、基本的に口臭はあまりしません。ただし、食べ物の影響を受けやすいので、においの強い ものを食べていないか確かめましょう。
食べ物が無関係となったら、鼻やのどの病気を疑ってみます。
「もちろん、歯肉炎や進行したむし歯が原因になっていることもありますが、
子どもの場合はそれより副鼻腔炎(ふくびくうえん)や膿(のう)栓(せん)などによって口臭がしている可能性が 高いのです。口の中を見てとくに問題がないようなら、まず耳鼻(じび)咽喉科(いんこうか)を受診するほうがいいでしょう」
また、歯の生え始めや生え替わりの時期は口臭がすることがあります。これは 歯が歯ぐきを溶かして生えるからで、放置してかまいません。
なにより、子どもに「口がくさい」と言わないことが大切です。
その一言に傷つき、成人後も口臭を気にしている人がいるそうです。
Qパパの口臭はたばことお酒のせい?
Aたばこは口臭のもと。お酒もにおいますが、ニンニクと同じで一過性です
たばこには数千種類の物質が含まれていますが、その中には口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)もあります。たばこを吸って数分後の息には、その一つである硫化水素が多いという実験結果もあり、喫煙が直接、息に影響を及ぼすことを示しています。また、口の中の粘膜や舌につくタール、ニコチンなどもにおいの原因になります。愛煙家と話していると、そのときにたばこを吸っていなくても、「たばこくさい」と感じることがあるのは、これが原因です。
お酒を飲んだときのにおいのもとは、アルコールが体内で分解されてできるアセトアルデヒドなどの揮発性の成分です。これが血液中に入って体内を巡り、肺から二酸化炭素と一緒に呼吸として出てきます。アルコールの量が多いとこの成分が翌日まで残り、二日酔いの、あの嫌なにおいになるのです。
ニンニクやネギ、ニラなどにおいの強いものを食べた後に息がくさくなるのも、同じです。
食べ物や飲み物による口臭は時間がたつにつれて薄くなるので、心配はいりません。
Q治療していないむし歯や歯周病は口臭の原因になる?
Aむし歯の影響は薄いですが、歯周病は口臭の原因になります
日本人の成人の約9割がかかっているといわれる歯周病は、口臭を起こす口の中の病気の代表です。国際口臭学会会長の八重垣健歯科医師(日本歯科大学生命 歯科部教授)は、歯周病の程度によって4グループに分けた患者さんの口の中の空気を調べ、口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)の濃度を比較しました。
結果は、出血指数が高くなるほどVSCの濃度が高くなっていました。つまり、歯周病がある人はない人より口臭が強く、歯周病が重症になるほど口臭が強くなるというわけです。
歯周病があると口臭が強くなることはヒポクラテスの時代から知られていましたが、
そのメカニズムが明らかになったのは、つい最近です。
歯周病になると歯肉の組織が壊され、血液や膿(うみ)が出てきます。舌(ぜっ)苔(たい)や歯垢(しこう)の中にすむ 細菌は、これらのたんぱく質を分解して口臭物質であるVSCを産生しますが、とくに 歯周病原菌はVSCの一つであるメチルメルカプタンを大量に発生させることがわかった のです。これには、歯周病になった歯肉からにじみ出る液体に、メチルメルカプタンの もとになる成分が多いことも関係していると考えられています。
「それだけではありません。最近の研究で、VSCは細胞を自死に追い込むことがわかって きました。つまり、口臭があると歯肉の組織が壊され、歯周病のきっかけになったり、歯周病 を進行させる要因になったりもするのです」一方、むし歯と口臭との関係はさほど強くありません。う蝕の程度の軽いむし歯が1、2本 あるぐらいなら、口臭の原因にはならないといえます。
ただし、進行したむし歯は別です。神経に炎症が及び、組織が腐敗した状態のむし歯が何本 もあるなら、口臭の原因になります。
口臭予防の面からも、むし歯が見つかったら早めに治療を受けることをおすすめします。
Q孫に「口がくさい」と言われた。年のせいとあきらめるしかない?
A加齢にともない唾液(だえき)分泌量が減るので口臭が出やすくなります
私たちは一日にどれくらいの唾液(だえき)を分泌しているか知っていますか。
なんと大人は約1.5㍑といわれています。しかしこれは、成人全体の話。 年をとるにつれて唾液を分泌している唾液腺が委縮するため、70歳以上では20代の4割程度しか分泌されなくなります。
唾液には、口の中の浄化作用や抗菌作用があるので、量が少なくなれば 自浄作用が低下して舌(ぜっ)苔(たい)や歯垢(しこう)がつきやすくなりますし、抗菌作用が低下 して細菌も増殖します。その結果、口臭物質をつくるのに適した環境が整い、口臭が強くなるのです。
しかし、年をとったからといって誰もが口臭に悩まされるとは限りません。「唾液の分泌量は年をとるにつれて誰でも多少は減るものですが、年齢以上の 極端な減少は、からだが弱ったり歯が悪くなったりしてしっかりかまなくなった という理由が大きいのです。つまり、よくかんで食べる人は唾液の分泌量低下を 抑えられるわけです。また、よくかむことで唾液腺の委縮も進みにくくなります。さらに口の周囲の筋肉を鍛える運動を習慣にすれば、口臭予防の大きな力になる でしょう」
高齢者の場合、加齢による唾液の減少に加えて、糖尿病などの病気や薬の副作用などが重なって口が乾いているケースも多くみられます。その場合は原因を取り除くことで潤いが増し、口臭も改善することが期待できます。
また、口の中が乾いてものが食べにくい、話しにくい、口の中が傷つきやすいなど の症状がある場合は、「ドライマウス(口腔乾燥症)」と考えられます。
「シェーグレン症候群」などの病気が原因になっていることがあるので、歯科を受診 しましょう。
*唾液腺の機能を高める口の運動
●リップトレーニング
歯をかみ合わせたまま、まず「イー」、次に「ウー」と声を出して言います。
●ポッピング(舌打ち)
舌の先で上あごをはじき、「タンタン」と音を出します。
※どちらも1セット20回で、1日2セットを目安に。
Qストレスは口臭と関係がある?
A緊張すると唾液(だえき)の分泌量が減って口臭が出やすくなります
マッサージを受けているとき、よだれをたらして眠ってしまったことはありませんか。
逆に、頼まれていたスピーチの順番が近づくにつれて、口の中がカラカラになった経験もあるでしょう。人は自分で唾液の分泌量をコントロールすることができません。
それは、唾液腺が自律神経の支配を受けているからです。自律神経には、緊張すると活動が活発になる交感神経と、リラックスしたときに優位になる副交感神経があります。副交感神経が強く働くと、たんぱく質の含有量が少ないサラサラした唾液がたくさん分泌されますが、緊張や不安、怒りなどストレスを感じて いるときは交感神経が強く働き、たんぱく質を多く含むネバネバした唾液が少ししか出ません。そのため、口が乾くのです。
ストレスと口臭の関係を暗示する、こんな報告があります。大学生にとって試験は大き なストレスです。そこで、試験前、試験中、試験後の3回、唾液分泌量と口臭物質濃度を 調べたのです。すると、試験日だけ唾液分泌量が低下し、口臭物質濃度は高まっていました。
ストレスによって唾液の量が減り、その結果、口臭が強くなったと考えられます。
Q高血圧の薬を飲み始めてから夫の口がくさい
A高血圧の薬だけでなく唾液(だえき)の分泌を抑える副作用がある薬があります
副作用として唾液の分泌を抑える薬はいろいろあります。コリン作動性遮断薬は、全身麻酔で起こりやすい神経反射などを抑制するために、麻酔の前に投与する薬です。日常生活でなじみ 深いのは、花粉症などに用いる抗ヒスタミン薬や降圧薬のカルシウム拮抗(きっこう)薬とループ利尿薬、メンタルの治療に用いられる抗うつ薬や抗不安薬などでしょう。
これらの多くは、自律神経に影響を及ぼして唾液の分泌を減らすと推測されています。
Q強い口臭がある。胃の検査を受けたほうがいい?
A胃の病気と口臭の強さは関係ありません。まずは口の検査を
「あなた、息がくさいわよ。胃が悪いんじゃない」
日本アンチエイジング歯科学会会長の松尾通歯科医師は、奥さんからこんな指摘を受けたことがあるそうです。
「よく胃が悪いと口臭が出るといわれますが、迷信の一つといえるでしょう。胃の上部の食道とつながっているところを噴門(ふんもん)といいますが、ここは括約筋(かつやくきん)なので普段はしっかりと閉じられています。息をするたびに胃の中の空気が上がってきて口から出るなどということは、普通はありません」
ただし、近年、注目されている「胃食道逆流症(GERD)」は例外です。この病気は、噴門の括約筋が機能低下を起こして胃酸や消化酵素が逆流するもので、内視鏡検査で食道 に炎症が見られる逆流性食道炎と、炎症所見はないが症状がある場合の総称として用いられています。主な症状は胸やけですが、一部の人で口臭をともなうことがあります。発症に精神的ストレスや過労などの身体的ストレスがかかわっていると考えられています。
Qおならの我慢で口臭が強くなるのは本当?
A本当です。腸内で発生したガスは肺からも出てきます
口臭の9割以上は口の中に原因があります。また、ゲップをしたときに胃の空気が口から出ることはあっても、胃の病気で口臭が強くなることは通常はありません。それなのに、おならを 我慢すると口臭が強くなるのはなぜでしょうか。
おならは、小腸で消化吸収されなかった食べ物のかすが大腸の腸内細菌によって分解されるときに発生する二酸化炭素やメタン、硫化水素などのガスです。これが肛門(こうもん)から排出されたものをおならと呼んでいるわけですが、実はこのガスのほとんどは腸管から吸収され、血液に乗って体内を巡り、肺でガス交換されて呼気として放出されています。普段においが気にならないのは、吸収後に肝臓で無臭化されるからです。
しかし、おならを我慢すると血液中に入るガスの量が増えてしまいます。これが肝臓の処理能力を上回れば、においが残ったまま肺から出ることになり、口臭が強くなってしまうのです。
腸内ガスを増やす最大の原因は便秘ですから、おならの我慢よりむしろ便秘が口臭予防の敵といえそうです。
Q口臭の強さに体質は関係ある?
A舌(ぜっ)苔(たい)のつきやすさや歯周病のかかりやすさなどは体質も関係します
生まれつき口臭が強い、あるいは弱いと言った意味で、体質が影響することはないと考えられ ています。しかし、口臭の二大原因である舌苔と歯周病に関しては、つきやすい、あるいはかかりやすい体質があります。
舌苔は、新陳代謝ではがれ落ちた粘膜の上皮細胞がもとになっているので、新陳代謝が早い 人は舌苔がつきやすいといえるかもしれません。また、口の中の細菌の種類は家族で似ており、親が歯周病なら子も歯周病原菌をもっている可能性が高くなります。
家族間では食習慣も引き継がれやすいものです。ニンニクやタマネギに含まれるシステインや豆類に多いメチオニンは、硫黄系アミノ酸と言って、口臭の原因になる成分です。
「こうした食品を子どものころから頻繁に、大量に食べていて、いまも大好きなら、口臭に
影響しないとは言い切れませんが、気にする必要はありません。」
Qキスで口臭をうつされないか心配
A口臭はうつりませんが、原因となる歯周病原菌はうつります
口の中の細菌はキスでうつるので、恋人やパートナーの歯周病原菌をもらってしまうことはあります。大切な人に口臭の原因をプレゼントしないよう、口の中の状態に注意したいものです。01年に、ライオンがニューヨークのマンハッタンと東京の大手町で、会社員の口腔(こうくう)保健について調査をしています。すると、マンハッタンでは約8割が1年に1回以上、歯の定期健診を受けているのに対し、大手町では6割以上が定期健診の習慣を持っていませんでした。キスを頻繁にする習慣がある国では、口の健康に対する意識が違うのかもしれません。
Q歯みがき剤や洗口液で口臭は減らせる?
A効果が認められた成分を配合した製品はごく一部です
口臭を改善するには、口の中の悪玉細菌を減らすことが大切。歯みがきやうがいはその有効な手段です。薬局・薬店にはさまざまな歯みがき剤や洗口液(デンタルリンス)が並び、その多くは効能・効果として「口臭の防止」を挙げています。
歯みがき剤や洗口液に求められる性質は三つあります。第一は口の中の細菌に対する殺菌・消毒作用、第二に口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)の産生を抑制する消臭作用、第三には悪臭を覆い隠すマスキング効果です。
殺菌・消毒作用のある成分が配合されていれば「口臭の防止」と明記することができるため、ほとんどの製品で「口臭の防止」がうたわれています。しかし人を対象にした試験で、その製品の有効性が確かめられたわけではありません。
殺菌・消毒作用のあるクロルヘキシジンや、消臭作用のある塩化亜鉛などの成分は、人を対象とした試験で口臭改善効果が確認されています。0.1%塩化亜鉛入り洗口液は、洗口後90分でVSC濃度が元の1割強にまで低下しました。しかし、そうした成分入りの製品はわずか。薬局・薬店で買えるものは少なく、多くは歯科医院専用です。
Qガムやキャンディーは効果があるの?
A消臭効果はありませんが、「くさいものにフタ」をすることはできます
ガムが口臭に及ぼす作用を、かむことと成分の両面から見てみましょう。まずはかむことから。ガムをかめば唾液(だえき)の分泌量は増えます。しかし、口臭は変化しません。キャンディーをなめても同じです。
「ガムをかむ前に唾液がどれくらい出ていたかで、口臭に及ぼす影響が違います。ドライマウスの人や、ストレスで一時的に唾液が少なくなっている人は、唾液が増えれば口臭は弱まります。しかし、正常に唾液が出ている人が、さらに唾液を増やしても、口臭の強さは変わりません」
一方、成分の影響では、ミント系などのさわやかな香りが、口臭を隠すマスキング効果をもたらします。
つまり、ガムは口臭そのものを減らすのではなく、別のにおいでごまかしているだけ。その効果も、せいぜい20分ぐらいしか続かないといわれています。
ただし、以上はシュガーレスガムの場合です。砂糖入りガムでは、口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)の発生が抑えられることがわかっています。
Q口臭を防ぐ食べ物や飲み物はある?
Aありません。3食を規則正しく食べることが予防の近道
口臭の原因になりやすい飲食物があるのですから、口臭を防ぐ飲食物があってもよさそうなものですが、残念ながらそんな重宝なものはありません。
「これから大事な会合があるのに、うっかりギョーザを食べたときは、うがいや歯みがきでにおいを弱くするしかありません。その際はカテキンの口臭予防効果が期待できるお茶を使うと効果的です。もちろん、飲むのもおすすめです」
東京医科歯科大学病院息さわやか外来担当で教授の川口陽子歯科医師は、「口臭を予防する食生活のポイントは、一日3食、規則正しく食べること」と話し、朝食をとることで口臭の強さがどう変わるか調べた結果を教えてくれました。試験では、ボランティア16人に、起床後うがいも歯みがきもせず、朝食もとらずに外来に来て
もらい、まず口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)の濃度を測定しました。このとき3種類のVSCはすべて基準値を超えていました。その後、うがいと歯みがきはせずに朝食だけをとってもらい、VSCを再測定したところ、3種類とも基準値以下に下がったのです。
「どんな人にもある生理的口臭は、空腹時に強く、食事をすることで弱まります。とくに一日の始まりである朝食をしっかりとることが大事です」
ところが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査(07年)によると、10年前に比べて朝食をとらない人がどの年代でも増えています。口臭を気にするなら、3食きちんと食べるといった基本的な食生活から改善するべきでしょう。間食は一般にすすめられませんが、空腹を避ける意味で口臭予防には役立ちます。ほかの健康問題のことも考慮し、食べるなら低カロリーのものを少量にとどめましょう。
Q口臭があるか自分で調べる方法はある?
Aありますが、自分で自分のにおいをかぐので正確ではありません
セルフチェックをするなら、コップの中に息を吹き込んで自分でにおいをかぐ方法がもっとも手軽です。ただし、自分の息に慣れてしまった自分の鼻でかぐので、判断が甘くなる可能性があります。手首をなめて唾液(だえき)のにおいをかぐ方法もありますが、口臭がなくても唾液はにおうことが多く、やはり正確ではありません。口臭は「第三者が不快に思うかどうか」が要点なので、他人ににおいをかいで判断してもらうのがいちばんです。
こうしたチェックは、起床後、うがいや歯みがき、食事をする前にしましょう。
*口臭のセルフチェック方
きれいに洗ったコップを上下左右に振って空気を入れ替えます。深く息を吸い、コップの
中に吹き込んだら、すぐ本などでフタをしてください。10秒持ってからフタを開け、コップ
の中のにおいをかぎましょう。
Q口臭を診てもらうなら歯医者さん?
A口臭の原因の9割以上は口の中にあります。まず歯科を受診しましょう
口臭の9割以上は口の中に主因があるので、最初の受診先は歯科にするほうが賢明です。
しかし、歯科医がみな口臭の診断や治療に詳しいわけではありません。
現在、歯学部や口腔(こうくう)外科のある大学の付属病院のほとんどに、口臭外来があります。
大学によって熱心さにばらつきはありますが、一定レベル以上の検査態勢が整い、診断後の
適切な治療も望めます。
もちろん、口臭にくわしく、精度の高い検査機器を備え、良心的な治療をする開業医もたくさんいます。しかし、口臭には心理的な問題がからむことも多いため、患者さんの不安な気持ちにつけ込んで高額な治療費を要求する歯科医がいることも事実です。両者を見分ける方法がない以上、はずれくじを引く可能性が低い大学病院のほうが安心というわけです。とくに初回は、少しぐらい遠くても、大学病院に足を運ぶほうが無難です。
診断の結果、開業医で治療できると判断されたら、近くの医院を紹介してもらえるでしょう。
Q口臭の程度を客観的な数値で表すことはできる?
Aできます。息を採取し、口臭物質の濃度を器械で測定します
口臭の強さは、息に含まれる揮発性硫黄化合物(VSC)の濃度で表すことができます。測定器で最も精度が高いのはガスクロマトグラフィーですが、大がかりな装置のため、一部の大学病院にしかありません。
一般の歯科医院にも普及しているのは簡易口臭測定器です。これには3種類ありますが、VSCを3種類のガス別に測定できる簡易型ガスクロマトグラフィーの「オーラルクロマ」が優れています。なぜなら、ガスの種類別に口臭の原因が測定できるからです。
硫化水素が多い人は舌(ぜっ)苔(たい)、メチルメルカプタンなら歯周病、ジメチルサルファイドは全身性
の疾患の可能性があります。
検査方法は簡単で、注射器の筒を30秒間くわえてもらい、中に入った空気のうち0.5㍉リットルを機械に針を刺して注入します。後は機械任せ。約8分で結果がプリントされます。
口臭の有無も、どのガスが多いかも一目瞭然(りょうぜん)なので、口臭があると思っていたのになかった人も、自分では気づいていなかったのに口臭があった人、たいていは納得するそうです。測定のほかに、訓練を受けた人が嗅覚(きゅうかく)でにおいの強さを判定する「官能検査」もあります。
「器械で測定して数値が出るとそれだけを信用してしまいがちですが、官能検査も重要です。実際の口臭はたばこなどほかのにおいも加わっているため、VSCしか検出しない検査では 引っかからないにおいがあるからです。人の嗅覚のほうがトータルに判定できるのです」
Q歯医者ではどんな治療をしてくれるの?
A薬は使わず、セルフケアと専門ケアで悪臭のもとを退治します
治療というと、医師主導で薬を使って治すイメージがあるかもしれません。しかし、口臭の治療では薬は使わず、本人が主体的に取り組むケアが中心になります。口臭の種類によって柱となる治療は異なりますが、「口腔(こうくう)清掃指導」はどのタイプにも必ず実施されます。
その内容には、歯みがきのしかたやデンタルフロスの使い方といった一般的なケアだけでなく、舌清掃の方法も含まれているのが特徴です。舌清掃とは、口臭のおもな発生源である舌(ぜっ)苔(たい)を、舌ブラシや舌ベラを使って取り除くこと。舌苔が落ちると口臭は激減します。
だからといって強くこすると、舌を傷つけて味覚障害を起こす危険があるので注意が必要です。
舌苔がついている場合だけ1日1回、起床直後に100㌘以下の力でみがくようにします。
100㌘の力は、舌ブラシをキッチン秤(はかり)に押しあてて体得するといいでしょう。
こうしたセルフケアを毎日の習慣にしたうえで、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれる歯科医や歯科衛生士が専用の器具を使って汚れを取り除く専門ケアを定期的に加えます。
もちろん、病的口臭なら、口臭の原因疾患の治療が最優先であることは、言うまでもありません。
*舌の清掃法
舌をできるだけ前に出し、気持ちが悪くならない程度にブラシを奥まで入れましょう。
奥から舌先に向かって軽いタッチでブラシを動かします。
Q検査や治療に健康保険は利くの?
A口臭測定は保険外。治療は口臭の原因によって保険が利くこともあります
口臭測定は自由診療なので、医療機関によって料金は異なります。なかには、サービスで 口臭を測定する医療機関があるかもしれません。
治療に関しては、口臭の原因によって健康保険が利く場合と聞かない場合があります。
例をあげましょう。口臭を気にして歯医者に行き、同じ口臭測定と口腔清掃指導を受けた
2人の男性がいるとします。Aさんが訴えた症状は口臭だけで、検査結果から生理的口臭と診断されました。この場合、健康保険は使えません。保険病名に「口臭症」や「口臭」がないからです。
Bさんも訴えた症状は口臭だけですが、診察で歯周病と診断され、次回からその治療を受けることになりました。この場合、初日は自由診療で、次回から保険診療になる可能性があります。
同じ口臭測定と口腔清掃指導を受けても、状況によってこのように違ってきます。口臭外来は原則として自由診療なので、歯ぐきの腫れや出血などがあったら歯周病ではないか
と言って受診したほうがいいかもしれません。
Q検査数値は基準以下だが安心できない
A心の問題が口臭の悩みという形で表れているのかも
定評ある大学病院で口臭を測定した結果、口臭物質は基準値以下で、歯科医にも「口臭はない」と言われたのに、「口臭がくさい」という思い込みから抜け出せないなら、「口臭恐怖症」の可能性があります。このような人は次々と歯科医を変えて無駄な時間や治療費を使ったり、高価なケア製品を次々に買い求めたりすることになりかねません。
口臭恐怖症の人は、「道を歩いていると、すれ違う人が顔を背ける」「話していると、相手が手で鼻を覆う」など、他人のちょっとしたしぐさを、自分の口がくさいからと考えてしまうようです。
「社会恐怖や対人恐怖などの心の病を持っていることが多く、自分にとって不本意なことを口臭に結びつけているのではないかと思われます。たかが口臭ですが、自殺を試みる人もいるので適切に対応する必要があります」
口臭恐怖症は歯科で対応できる範囲を超えているので、心療歯科があればそこを、なければ精神科や心療内科を受診することをおすすめします。




